pi

円周率

Landau-Ginzburg modelについて

はじめに

この記事は数理物理Advent Calender

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の1日目の記事です。

多くの方にご登録いただきまして、ありがとうございます。まだ空いている日にちがあるので、ご興味ある方はぜひご寄稿ください。僕も余裕があれば追加の記事を書きたいと思っています。

さて、以前よりミラー対称性に興味がありながらなかなか勉強する機会がなかったのですが、いい機会なので少し勉強してみました。まだ勉強を始めたばかりなので、定義や定理の詳細については全く説明できません。また数理物理といいながら物理の話は全くできませんので、その点についてはご容赦ください。

ミラー対称性とは

ミラー対称性についての漠然とした認識として、何らかの幾何的対象のペアXとYがあって、相互のA-side A(X), A(Y)とB-side B(X), B(Y)という二種類の幾何学が入れ替わって対応するというものがあります。つまりA(X)=B(Y)でB(X)=A(Y)となるという感じです。

ここで二つの幾何の同値性としては、何らかの幾何的な不変量の一致によって特徴付けます。不変量としては、例えば何か関数であったり、適当な代数構造であったり、圏であったりといったものを考えます。このように色々なバリエーションがあり、またそれら相互の間に関係があると考えられています。

幾何的対象XやYとしては例えばCalabi-Yau多様体であったり、Fano多様体であったり、Landau-Ginzburg modelがあり、対応もLandau-Ginzburg modelとCalabi-Yauであったり、Fanoであったりが対応するというものもあります。

この記事で扱いたいのはLandau-Ginzburg modelという幾何的対象で、これについてA-sideの不変量であるFJRW-theoryについて簡単に紹介することが目的です。

Landau-Ginzburg model

Landau-Ginzburg model(以下ではLG-modelと略記します)とは、X=(M,W)でMは適当な多様体でWはM上の関数です。MとしてCnをしばしば考えます。特に写像Wの0での逆像W-1(0)が孤立特異点を持ち、アーベル群GはWの対称性を表します。Mを省略してX=(W,G)と書いたりします。

cohomological Field Theory

cohomological Field Theoryの代表的な例としてGromov-Witten theoryがあります。 ここではまずそれについて簡単に説明します。

Xを適当な空間としMg,kを曲線のモジュライ、Mg,k(X,b)を曲線からXへの射で像のホモロジー類がbであるもののモジュライとします。 Mg,k(X,b) \to Mg,kおよびMg,k(X,b) \to Xが自然に定まり、これを用いてGromov-Witten classというMg,kのコホモロジー類を定めます。

これはvirtual fundamental classというV=[Mg,k(X,b)]vir \in H(Mg,k(X,b),C)を用いた交点積p*(\prodI evi(vi) \cap V) \in H(Mg,k,Q)です。この基本類との積は通常の状況だと数え上げをしているというふうに解釈でき、Xで各viと交わりホモロジー類がbと一致する曲線の数を数えるというものになりますが、実際には修正が必要でvirtual classを考えることになります。

これがKontsevich-Maninによるcohomological field theoryの公理を満たします。この公理はMg,kに対する種々の幾何的公理について上で構成したGW-classが整合的であるというもので、具体的には点の入れ替えや曲線の結合などで定まるMg,kたちの間の写像がコホモロジーH(Mg,k)に誘導する射でGW-classたちがうつりあうというものです。

詳しくは例えばこちらをごらんください。

https://arxiv.org/pdf/1712.02528.pdf

FJRW-theory

さて、上で紹介したGW-theoryは例えばCalabi-Yau多様体Xに対するA-sideの不変量A(X)ですが、LG-modelに対するA-sideとしてFJRW-theoryというものがあります。これは上のGW-theoryと同様にcohomological Field Theoryなのですが、このFJRW-theoryがどのようなものか簡単にみてみたいと思います。

まずstate spaceとして、GW-theoryではXのコホモロジーを用いましたが、今回は(W,G)から定まるrelative Chen-Ruan cohomology HCR([CN/G], W\infty)を使います。ここで[CN/G]はquotient stackでW\inftyは十分大きな実数M>>0に対する(M,\infty)のRe(W)による逆像です。

次に、GW-theoryでは安定曲線のmoduli Mg,kを考えていたのですが、ここでは代わりにW-曲線の moduli Wg,kW,Gを考えます。これはより正確には(C,p,P,k)のmoduliで

  • (C,p)は種数gのk点付きorbicurve
  • (P,k)は\Gamma-structure

です。 ここで\GammaとはWとGから適切に定まる(C^*)Nの部分群で、\Gamma-strとは

  • C上のある性質を満たす主\Gamma束P
  • Pを\zeta:\Gamma \to Cxで押し出した\zeta*Pと\omegalog,Cの主Cx束としての同型

です。 このmoduliから曲線の成分を取り出すことでMg,kへの射が定まります。

またGW-theoryでは写像のmoduliの上にvirtual classを定め、これを用いてGW-class in H(Mg,k(X,b),C)を定めました。今回はvirtual classをH(W) \otimes HCRに定め、これとの交点積を同様にとり、さらに曲線のmoduliにpushoutすることによってHCRからFJRW-classを定めます。

このようにして定義される構造がcohFTの公理を満たすことが証明され、これがLG A-modelの不変量になります。実は上で出てきたGW-theoryとFJRW-theoryを結びつけるLG/CY対応というものがあるのですが、今回は割愛します。

FJRW-theoryに関しては以下のsurveyが参考になります。

https://arxiv.org/pdf/1503.01223.pdf

Witten予想

FRJW-theoryから、その母関数を定義することができ、それがKdV階層の\tau関数であることが証明されます。LG-modelにおいてW-1(0)は孤立特異点を持ちますが、この特異点が最も単純なA_1型の場合がKontsevichにより解決されたWitten予想です。

LG B-model

じゃあB-sideは何なのか。Milnor ringとかSaito-Givental-theoryとかmatrix factorizationとかsingularity categoryとかがあるようなんですが、この辺の詳細を僕がまだわかっていません。またわかったところで続きを書くということで今日のところは終わりにしたいと思います。

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