はじめに
こちらは日曜数学 Advent Calendar 2017 - Adventar18日目の記事です。昨日はキグロさんのみらいけん数学デーまとめ:呟きの補集合 - ブロマガでした。
Riemann zetaの類似としてSelbergにより定義されたSelberg zetaがあります。
ここで Γ は SL(2,R) の離散部分群で、Cp はΓの共役類の代表元で他の元のベキにならないもの全体とします。 また l(γ) は上半平面の双曲計量を用いて定義される距離 d(γz, z) の上半平面の点 z に関する最小値です。
このSelberg zetaと先日ご紹介したSelberg trace formula 1 - pi
との関係を簡単にですが書いてみようと思います。記号等の説明も含めて、上記記事を先にお読みいただけると幸いです。
本題
この二つの式で直接結びつくのは、trace formula右辺の の部分と、zetaの各因子のlog微分
です。
trace formulaの右辺第二項を計算します。 sinh(x)-1 = 2/(exp(x)-exp(-x)) = 2exp(-x)(1-exp(-2x))-1 をexpの級数に展開します。 すると、
となります。g が h のFourier変換であることを使うと、上の式は
となります。 さらに右辺の被積分関数をexp(-nl(γ)(1/2 + m + iρ)と整理しnについての和を取ることで、 この被積分関数は(1-exp(-l(γ)(1/2 + m + iρ)))-1となります。
つまりまとめると
となります。h(ρ') = 1/(ρ2 - ρ'^2) とし s = 1/2 + iρ' とすることで、zetaのlog微分の各項が出てきます。
この h(ρ') = 1/(ρ2 - ρ'^2) を用いて ρ = √(λ- 1/4) としたとき、Selberg trace formulaの左辺 Σih(ρ_i) は次のようにLaplacianのtraceと見なせます。
Laplacian Δ は L2(Γ\H) 上の線形作用素ですが、これを行列と思うことにして (Δ - λ) の逆行列を考えます。固有値が λi なので対角化されていると思うと 1/(λ - λi)を対角成分にもつ行列がこの逆行列です。これのTraceを計算してみると、Σi (λ - λi)^{-1} になります。
このようにしてSelberg zetaの性質をSelberg trace formulaを用いて調べることができます。
実際には上の形の h はSelberg trace formulaを使うための条件を満たさないので、それを回避するための議論が必要になります。
終わりに
上記の議論の詳細も含めて後日加筆修正します。またSL(2,R)の表現との関係についてもこれから書いていきます。
明日はohtoyaさんの「グラフ問題についてなんか書きます」です。お楽しみに。