pi

円周率

Landau-Ginzburg modelについて

はじめに

この記事は数理物理Advent Calender

adventar.org

の1日目の記事です。

多くの方にご登録いただきまして、ありがとうございます。まだ空いている日にちがあるので、ご興味ある方はぜひご寄稿ください。僕も余裕があれば追加の記事を書きたいと思っています。

さて、以前よりミラー対称性に興味がありながらなかなか勉強する機会がなかったのですが、いい機会なので少し勉強してみました。まだ勉強を始めたばかりなので、定義や定理の詳細については全く説明できません。また数理物理といいながら物理の話は全くできませんので、その点についてはご容赦ください。

ミラー対称性とは

ミラー対称性についての漠然とした認識として、何らかの幾何的対象のペアXとYがあって、相互のA-side A(X), A(Y)とB-side B(X), B(Y)という二種類の幾何学が入れ替わって対応するというものがあります。つまりA(X)=B(Y)でB(X)=A(Y)となるという感じです。

ここで二つの幾何の同値性としては、何らかの幾何的な不変量の一致によって特徴付けます。不変量としては、例えば何か関数であったり、適当な代数構造であったり、圏であったりといったものを考えます。このように色々なバリエーションがあり、またそれら相互の間に関係があると考えられています。

幾何的対象XやYとしては例えばCalabi-Yau多様体であったり、Fano多様体であったり、Landau-Ginzburg modelがあり、対応もLandau-Ginzburg modelとCalabi-Yauであったり、Fanoであったりが対応するというものもあります。

この記事で扱いたいのはLandau-Ginzburg modelという幾何的対象で、これについてA-sideの不変量であるFJRW-theoryについて簡単に紹介することが目的です。

Landau-Ginzburg model

Landau-Ginzburg model(以下ではLG-modelと略記します)とは、X=(M,W)でMは適当な多様体でWはM上の関数です。MとしてCnをしばしば考えます。特に写像Wの0での逆像W-1(0)が孤立特異点を持ち、アーベル群GはWの対称性を表します。Mを省略してX=(W,G)と書いたりします。

cohomological Field Theory

cohomological Field Theoryの代表的な例としてGromov-Witten theoryがあります。 ここではまずそれについて簡単に説明します。

Xを適当な空間としMg,kを曲線のモジュライ、Mg,k(X,b)を曲線からXへの射で像のホモロジー類がbであるもののモジュライとします。 Mg,k(X,b) \to Mg,kおよびMg,k(X,b) \to Xが自然に定まり、これを用いてGromov-Witten classというMg,kのコホモロジー類を定めます。

これはvirtual fundamental classというV=[Mg,k(X,b)]vir \in H(Mg,k(X,b),C)を用いた交点積p*(\prodI evi(vi) \cap V) \in H(Mg,k,Q)です。この基本類との積は通常の状況だと数え上げをしているというふうに解釈でき、Xで各viと交わりホモロジー類がbと一致する曲線の数を数えるというものになりますが、実際には修正が必要でvirtual classを考えることになります。

これがKontsevich-Maninによるcohomological field theoryの公理を満たします。この公理はMg,kに対する種々の幾何的公理について上で構成したGW-classが整合的であるというもので、具体的には点の入れ替えや曲線の結合などで定まるMg,kたちの間の写像がコホモロジーH(Mg,k)に誘導する射でGW-classたちがうつりあうというものです。

詳しくは例えばこちらをごらんください。

https://arxiv.org/pdf/1712.02528.pdf

FJRW-theory

さて、上で紹介したGW-theoryは例えばCalabi-Yau多様体Xに対するA-sideの不変量A(X)ですが、LG-modelに対するA-sideとしてFJRW-theoryというものがあります。これは上のGW-theoryと同様にcohomological Field Theoryなのですが、このFJRW-theoryがどのようなものか簡単にみてみたいと思います。

まずstate spaceとして、GW-theoryではXのコホモロジーを用いましたが、今回は(W,G)から定まるrelative Chen-Ruan cohomology HCR([CN/G], W\infty)を使います。ここで[CN/G]はquotient stackでW\inftyは十分大きな実数M>>0に対する(M,\infty)のRe(W)による逆像です。

次に、GW-theoryでは安定曲線のmoduli Mg,kを考えていたのですが、ここでは代わりにW-曲線の moduli Wg,kW,Gを考えます。これはより正確には(C,p,P,k)のmoduliで

  • (C,p)は種数gのk点付きorbicurve
  • (P,k)は\Gamma-structure

です。 ここで\GammaとはWとGから適切に定まる(C^*)Nの部分群で、\Gamma-strとは

  • C上のある性質を満たす主\Gamma束P
  • Pを\zeta:\Gamma \to Cxで押し出した\zeta*Pと\omegalog,Cの主Cx束としての同型

です。 このmoduliから曲線の成分を取り出すことでMg,kへの射が定まります。

またGW-theoryでは写像のmoduliの上にvirtual classを定め、これを用いてGW-class in H(Mg,k(X,b),C)を定めました。今回はvirtual classをH(W) \otimes HCRに定め、これとの交点積を同様にとり、さらに曲線のmoduliにpushoutすることによってHCRからFJRW-classを定めます。

このようにして定義される構造がcohFTの公理を満たすことが証明され、これがLG A-modelの不変量になります。実は上で出てきたGW-theoryとFJRW-theoryを結びつけるLG/CY対応というものがあるのですが、今回は割愛します。

FJRW-theoryに関しては以下のsurveyが参考になります。

https://arxiv.org/pdf/1503.01223.pdf

Witten予想

FRJW-theoryから、その母関数を定義することができ、それがKdV階層の\tau関数であることが証明されます。LG-modelにおいてW-1(0)は孤立特異点を持ちますが、この特異点が最も単純なA_1型の場合がKontsevichにより解決されたWitten予想です。

LG B-model

じゃあB-sideは何なのか。Milnor ringとかSaito-Givental-theoryとかmatrix factorizationとかsingularity categoryとかがあるようなんですが、この辺の詳細を僕がまだわかっていません。またわかったところで続きを書くということで今日のところは終わりにしたいと思います。

この記事について誤りや疑問点などあれば、お気軽にコメントください。

数学について話す会

先日、数学について話す会というのを開催した。

数学について話す会

当日の様子は松森さんにまとめていただきました。

togetter.com

色々な参加者、内容の話が聞けて楽しかったし、また各講演に対して質問もたくさん出て勉強になった。 各講演について簡単にですが感想を。

順序数について基本的な定義からやってくれてよかった。 こういう話って人から聞くと入ってきやすい気がする。

  • 数学の定理を物理的に解釈 三島太郎@hdfghgftrr

中高ぐらいで扱う内容を違う切り口で話して面白かった。 物理的な解釈というのは考えたことがなかったし、自分も授業などで使ってみたい。 こちらの本に詳しくあるとのこと。

gihyo.jp

仕事で自然言語処理をやっているということで、それについて基本的な話を聞けた 共起というのが重要らしいことがわかった。

  • 計算論とライスの定理について @λx.x

プログラムに対して決定不能性という概念と、それについてのライスの定理について。 仕事にも役立ったというところも面白かった。(訂正。仕事ではなく、趣味のプログラミングとのことです。) 話の内容には関係ないがmathpowerを見たのがきっかけというのを聞いて嬉しかった。

qiita.com

  • 一昨日arXivにあがった論文について せきゅーん@integers_blog

p進ゼータ値の無理性についての新しい結果。 p進ゼータだと偶数で0になるということも知らなかったが、積公式のようなものはあるんでしょうか。

(勝手に)一緒に勉強していると思ってるinfinity圏の話。 基本的なところがうまくまとまってたけど、15分では話すのが大変そうだった。

speakerdeck.com

半整数ウェイト保型形式を勉強したくなった。 L-valueがわかるというWaldspurgerの定理がすごそうな感じだった。

www.slideshare.net

tsujimotter.hatenablog.com

  • グラフ理論の基礎と確率論的手法について 藤井

グラフ理論での確率的手法を紹介してもらった。確率を使うという考え方が面白く、加法的数論への応用もあるということだった。 タオのブログを参考にしたそう。

The crossing number inequalityterrytao.wordpress.com

楕円曲線の虚数乗法の話。ray類体の具体例。計算するのが好きなのでよかった。

  • 実二次体の類数公式について 中澤俊彦

最近個人的によく話してる話で、類数公式を一般化するという感じのことだった。

  • Chowla-Selberg 公式について 梅崎直也@unaoya

楕円曲線の周期とガンマ関数を結びつけるChowla-Selbergの公式について、Grossによる代数幾何的証明を紹介した。

speakerdeck.com

多重ガンマの話。新谷の多重ガンマはKroneckerの極限公式の別証明のはずで、僕の話とも何らか関係あるかもしれないというのが気になった。

slides.com

事前に一番楽しみにしていたけど、難しかった。でもこういう難しい話が聞けたのでこの会をやってよかった。q類似の話は色々気になっているので、いずれ詳しく話を聞きたい。

github.com

github.com

朝の話の続き。順序数の和、積、べきでどんどん作っていくということをやっていた。\epsilon_0でもまだ小さいというのが面白かった。

Quiverからk代数を作るという話。quiverの表現論と関係あるということだった。 Quiverの表現てたまに話を聞くので、きっと色々面白い例があるんだと思う。

Poisson和公式がなぜあるかということがわかる、読めば感動する証明らしい。

integers.hatenablog.com

  • 周期と Kontsevich-Zagier 予想について @m_river_

周期という数のクラスで積分の変形で二つの違う表示を持つ周期が一致するか判定できるかという話。割と途方も無い問題なように思うけど、こういうのはどう解決するんでしょうかね。

という全17講演でした。

次回に向けての反省点としては、講演時間をもうちょっと考えた方がよいのと、 ツイッターも活用してもよかった(ハッシュタグ告知するとか)。

来年春頃にまた開催したいと思いますので、機会があればご参加ください。

類体論

これから何回かに分けて類体論とそれにまつわる数学的対象について整理していこうと思います。ここでは類体論とはいわゆる大域類体論のことで、この記事ではまず簡単に類体論の主張について紹介します。

より平易な解説としては例えばtsujimotterさんの

tsujimotter.hatenablog.com

をごらんください。この記事での定式化は上のものと少し異なりますが、その比較についても後に簡単に説明します。

準備

類体論の主張を述べるために必要な大域体と局所体、イデールについて簡単に紹介します。

これらの最も簡単な例は以下のものです。

  • 大域体は有理数体Q
  • Qの局所体はp進数体Qpもしくは実数体R
  • QのイデールAQxとは、x=(x2, x3, x5, ...)のようにQの局所体QpとRの元を並べたものの集まり。ただし、各々xpは0でなく、また有限個を除いては既約表示した分子分母にpが現れないもののみを集めます。例えばAQxの元としては(1,1,1,...), (2,2,2,...), (2,3,5,1,1,...)のようなものはいいけど、(2,3,5,7,11,13,...)のようなものはダメ。

大域体

より一般に大域体とは

  • 有理数体もしくはその有限次拡大
  • 有限体上の曲線の関数体

のことを言います。 有理数体Qの他には例えばGauss有理数(という言い方があるかはわかりませんが)a + bi 全体のなす体Q(i)や円分体などがあります。

局所体

大域体には素点というものが定まります。 これは有理数体における素数pのようなものです。 大域体Eとその各素点vに対して、局所体Evが定まります。 E=Qの場合には、EvはQpまたはRのいずれかです。

一般に局所体は

  • p進体Qpもしくはその有限次拡大
  • 実数体Rまたは複素数体C
  • 有限体係数のLaurent級数体

のいずれかです。

イデール

大域体Eとその各素点vに対して局所体Evが定まります。 各Evから一つずつ元をとってまとめたx = (xv)という形の元を考えます。 ただし、各々xvは0ではなく、また有限個の例外を除いてxvの分子分母がvで割れないようなもののみ集めます。 これらを集めたものをEのイデールといい、AExと書きます。

イデールは各成分ごとの積により群になります。

またEの0以外の元全体ExはEの元xを単に並べた(x,x,x,...)とみなすことでAExの部分群になり、これによる商群Ex \AExをイデール類群と呼びます。

大域類体論

類体論は大域体Eのアーベル拡大の様子をイデールを用いて記述する理論のことです。 またそれを通して素数の分解法則や平方剰余の相互法則のような数論的な現象を記述することができます。

GEabはEの最大アーベル拡大EabのGalois群とします。

大域体Eに対し、相互写像

 r_E : E^\times \backslash A_E^\times \to G_E^{ab}

が存在して、以下の性質を満たすというのが類体論の主張です。

関手性

F/Eを大域体の有限次拡大とした時、ノルム写像N:F -> Eが定まり、相互写像はこれについて関手的である。 つまり、Nが定めるN:Fx \AFx -> Ex \AExと拡大から定まる包含写像i:GFab -> GEabについて、

r_E N = i r_F

が成り立ちます。

またE/FがGalois拡大の時、相互写像から定まる写像

 (E^\times \backslash A_E^\times) / N(F^\times \backslash A_F^\times) \to Gal(F/E)

は同型になります。

局所大域整合性

大域体Eの局所体Evの元xに対し、イデールの元yをv成分がxで他が1として定めることができます。 このyを相互写像rEで写した行き先は、vでのFrobenius写像になります。 より精密に、以下で述べる局所相互写像によりyの行き先を記述することができます。

逆にいうとrEはEの各素点vでの局所相互写像rvをまとめたものとして定義することができるというのがこの整合性です。

局所類体論

局所大域整合性を記述するために局所類体論を説明します。

局所体Evの最大アーベル拡大のGalois群をGvabとします。 これに対し、局所相互写像

 r_v:E_v^\times \to G_v^{ab}

が定まり、以下の性質をみたします。

Fw/Evを局所体の有限次拡大とした時、ノルム写像N:Fw -> Evが定まり、相互写像はこれについて関手的。 つまり、Nが定めるN:Fwx -> Evxと拡大から定まる包含写像i:Gw -> Gvについて、

r_v N = i r_w

が成り立ちます。

またFw/EvがGalois拡大の時、相互写像が誘導する

 E_v^\times/NF_w^\times \to Gal(F_w/E_v)

は同型になります。

さらに局所相互写像により、Evの素元とGvabのFrobeniusが対応します。

実際には素元は一意ではなく、またFrobeniusも一意ではないですが、この不定性も対応します。 また、拡大の分岐から定まるGvの部分群とEvxの適切な部分群が対応することもわかります。

相互写像

相互写像という名前について、推測ですが以下のようなことと関係があると思います。

上の定理の主張ではさらっと書かれていますが、重要なポイントは、局所体の相互写像rvを集めてできる大域体の相互写像rEは、イデール類群E^\times \backslash A_E^\timesからの写像であるということです。

例えばEが有理数体Qの場合、有理数xに対しこれを各p進体Qpの元だと思った上で局所相互写像でうつすとrp(x)たちが定まります。 上でいうイデール類群からの写像であるという事実は、このrp(x)をp全体で積を取ると1になるということを意味します。

これが積公式や平方剰余の相互法則といった整数論的な現象と関係してきます。 平たく言えば局所的な情報を集めてくることで大域的な情報が得られるということで、微分と積分を結びつける微積分学の基本定理のようなものかもしれません。

イデアルとイデール

ここでは類体論をイデール類群を用いて定式化しましたが、イデアル類群を用いた形で定式化されることも多く、上で紹介した記事もそのように書かれています。

ここで紹介したものとの関係は、簡単に言うと次のようにイデールとイデアルを対応させることで説明できます。

イデールの元(xv)に対して、イデアル \prod_vp_v^{ord_v(x_v)}を対応させます。ここでordvはxvがvで何回割れるかです。

イデールの定義からこれは実質的には有限積なので、ちゃんとイデールの元にイデアルを対応させることができます。 これにより二つの相互写像の定式化を結びつけることができます。

例えばQのイデールの元xとしてp成分のみpで他が1の元を考えると、イデアルとしては素イデアルpに対応します。 局所大域整合性から、rQ(x)はpでのFrobeniusに移ります。 つまりイデアルを用いた相互写像の定式化では、素イデアルpが相互写像によりpでのFrobeniusにうつるということになります。

また局所類体論での分岐の記述により、modulus付きのイデアル類群とray類体についての相互写像も理解できます。

次回予告

次回は、局所類体論の主張とその証明の方針ついて解説していきます。

解の個数を数える

この記事は

この記事は数学とコンピュータ Advent Calendar 2017 - Qiita 21日目の記事になるはずだったものです。

いざ書こうと思ってみると色々理解してからの方がいい気がしてきて、いつの間にか締め切りを過ぎてしまいました。ご迷惑をおかけしました。

不完全ですが、言い訳とともに公開します。

書きたかったこと

y^2 = x^3 + x^2 - x

という方程式の解を各素数 p ごとにmod pで考え、その個数をa(p)とします。

Hasseの定理によると、この解の個数a(p)は、次の不等式をみたします。

|a(p) - 1 - p| < 2√p

つまり、(a(p) - 1 - p) / 2√p は -1 から 1 の間の実数になります。そこで、あるθpを用いてcos θp = (a(p) - 1 - p) / 2√p と表すことができます。

今回は以下のコードにより、20000以下の素数pについてθpを計算し、その分布をプロットしてみました。ここで、曲線はsin2θのグラフです。

gistef825ac42c21a87ade265ac7337c4ee5

f:id:unaoya:20171225211453p:plain

ちょっと真ん中がずれてるところが気になりますが、だいたい同じような形になっています。

このθpの分布がsin2θに従うであろうということは、佐藤幹雄と難波完爾により計算機による実験により予想されました。実際には上の形以外のy2 = xの3次式についても(いくつかの例外的な場合をのぞいて)同様の事実が成り立つことが予想されました。その経緯については難波本人により以下の文献に書かれていますのでごらんください。

http://www2.tsuda.ac.jp/suukeiken/math/suugakushi/sympo16/16_8nanba.pdf

その後、Tateにより上記の分布とL関数と呼ばれる関数の性質が結びつけられ、佐藤Tate予想と呼ばれます。

佐藤Tate予想は10年ぐらい前にTaylorたちによってL関数の性質が証明されたことで解決しました。解決の経緯は京都大学の伊藤さんによる以下の文献をごらんください。

https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~tetsushi/files/msj200903_slide

言い訳

遅れた上に不完全なまま公開したのは以下の理由があります。

まず計算を高速化しようと思ってとりあえずnumpy使おうと思ったのですが、powerのmod pがnumpyでは実装されていませんでした。numpyのちょうどいい勉強になるので、自分で実装します。実際はpython以外の言語でやったほうがおそらくライブラリもあって早いと思うので、そのあたりも勉強します。

それから予想のTateによる定式化について説明を書こうと思ったのですが、これも勉強不足で時間が足りませんでした。

  • L関数の性質との関係について、Wiener-Ikeharaの定理と呼ばれる定理を用います。この証明について触れないと説明した気分にならないのでそれを勉強しています。

  • もう一つはなぜsin2が出てくるのかについて、これはSU(2)上の積分と関連するのですが、これもせっかくなので表現論を勉強してから改めて書いたほうが説明した気分になるのでそうすることにします。

というわけで数学とコンピュータというテーマから思いつきで佐藤Tate予想について書こうと思ったものの、勉強してみると意外と色々面白くて、せっかくの題材なのでもっと勉強してから書くことにしました。

Selberg trace formula 2

はじめに

こちらは日曜数学 Advent Calendar 2017 - Adventar18日目の記事です。昨日はキグロさんのみらいけん数学デーまとめ:呟きの補集合 - ブロマガでした。

Riemann zetaの類似としてSelbergにより定義されたSelberg zetaがあります。

 \displaystyle
Z_\Gamma(s) = \prod_{\gamma \in C_p}\prod_{m=0}^\infty(1-\exp(-l(\gamma)(s+m))

ここで Γ は SL(2,R) の離散部分群で、Cp はΓの共役類の代表元で他の元のベキにならないもの全体とします。 また l(γ) は上半平面の双曲計量を用いて定義される距離 d(γz, z) の上半平面の点 z に関する最小値です。

このSelberg zetaと先日ご紹介したSelberg trace formula 1 - pi

 \displaystyle
\sum_i h(\rho_i) = \frac{{\rm vol}(\Gamma\backslash H)}{4\pi}\int_{-\infty}^\infty h(\rho){\rm tanh}(\pi\rho)\rho d\rho +  \sum_{\gamma\in C_p}\sum_{n=1}^\infty \frac{l(\gamma)g(nl(\gamma))}{2{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)}

との関係を簡単にですが書いてみようと思います。記号等の説明も含めて、上記記事を先にお読みいただけると幸いです。

本題

この二つの式で直接結びつくのは、trace formula右辺の  \displaystyle
\frac{l(\gamma)g(nl(\gamma))}{2{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)}
の部分と、zetaの各因子のlog微分

 \displaystyle
\frac{d}{ds}(\log(1-\exp(-l(\gamma)(s+m))))=-l(\gamma)(1-\exp(-l(\gamma)(s+m)))^{-1}

です。

trace formulaの右辺第二項を計算します。 sinh(x)-1 = 2/(exp(x)-exp(-x)) = 2exp(-x)(1-exp(-2x))-1 をexpの級数に展開します。 すると、

 \displaystyle
\frac{l(\gamma)g(nl(\gamma))}{2{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)}=l(\gamma)g(nl(\gamma))\exp(-nl(\gamma)/2)\sum^\infty_{m=0}\exp(-mnl(\gamma))

となります。g が h のFourier変換であることを使うと、上の式は

 \displaystyle
\int^\infty_{-\infty} \frac{l(\gamma)}{2{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)} \exp(i\rho nl(\gamma))h(\rho)d\rho =\frac{l(\gamma)}{\pi}\int^\infty_{-\infty}\exp(-nl(\gamma)/2)\sum^\infty_{m=0}\exp(-mnl(\gamma))\exp(i\rho nl(\gamma))h(\rho)d\rho

となります。 さらに右辺の被積分関数をexp(-nl(γ)(1/2 + m + iρ)と整理しnについての和を取ることで、 この被積分関数は(1-exp(-l(γ)(1/2 + m + iρ)))-1となります。

つまりまとめると

 \displaystyle
\sum_{n=1}^\infty\frac{l(\gamma)g(nl(\gamma))}{2{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)} = \frac{l(\gamma)}{\pi}\int_{-\infty}^\infty\sum_{m=0}^\infty (1-\exp(-l(\gamma)(\frac{1}{2}+m+i\rho)))^{-1}h(\rho)d\rho

となります。h(ρ') = 1/(ρ2 - ρ'^2) とし s = 1/2 + iρ' とすることで、zetaのlog微分の各項が出てきます。

この h(ρ') = 1/(ρ2 - ρ'^2) を用いて ρ = √(λ- 1/4) としたとき、Selberg trace formulaの左辺 Σih(ρ_i) は次のようにLaplacianのtraceと見なせます。

Laplacian Δ は L2(Γ\H) 上の線形作用素ですが、これを行列と思うことにして (Δ - λ) の逆行列を考えます。固有値が λi なので対角化されていると思うと 1/(λ - λi)を対角成分にもつ行列がこの逆行列です。これのTraceを計算してみると、Σi (λ - λi)^{-1} になります。

このようにしてSelberg zetaの性質をSelberg trace formulaを用いて調べることができます。

実際には上の形の h はSelberg trace formulaを使うための条件を満たさないので、それを回避するための議論が必要になります。

終わりに

上記の議論の詳細も含めて後日加筆修正します。またSL(2,R)の表現との関係についてもこれから書いていきます。

明日はohtoyaさんの「グラフ問題についてなんか書きます」です。お楽しみに。

Selberg trace formula 1

はじめに

こちらは数学カフェ Advent Calendar 2017 - Adventarの15日目の記事です。 

数学カフェで関数解析について勉強したので、以前から気になっていたSelberg trace formulaについて少し書いてみます。また2月には数学カフェで微分幾何の回があるということで、この記事ではそれとの関係も少し書きました。

この記事は以下の文献を参考にしています。

[math/0407288] Selberg's trace formula: an introduction

 

Selberg trace formulaとは

Selberg trace formulaとは、複素上半平面における以下の公式のことです。

Laplacianの固有値に関する無限和 = 測地線の長さに関する無限和

より詳しく状況を見ていきましょう。

双曲計量

複素上半平面 H には通常の平面のものとは違う特別な長さの測り方を定めることができます。これを双曲計量といいます。この双曲計量を用いて直線の一般化である測地線を定義することができます。

上半平面 H には一次分数変換として SL(2,R) の作用が定まりますが、上の双曲計量で測るとこの変換は二点間の距離を変えないものになっています。

これについてはmatsumoringさんの

双曲平面のモデルと初等幾何

や、tsujimotterさんの

「基本領域ゲーム」を作った - tsujimotterのノートブック

が参考になりますので、そちらをごらんください。

右辺

例えばSL(2,Z)のような SL(2,R) の離散部分群 Γ を考えます。Γ の元 γ の長さ l(γ) を上半平面 H の点 z と γz の距離の z をすべて考えた中での最小値として定義できます。

この長さ l(γ) たちをすべての Γ の元について和をとったものが公式の右辺です。  

左辺

上半平面 H 上の関数に対する微分作用素として、上の SL(2,R) の変換と整合的な微分作用素 Laplacian Δ を定めることができ、また上半平面 H 上の測度 dμ も定めることができます。

これを用いて上半平面 H 上の Γ 不変な関数のなす関数空間 L2(Γ\H) を定義し、Laplacian Δ をこの関数空間への線形作用素として定めることができます。

この作用素の固有値について和をとったものが公式の左辺です。  

改めて公式

今回は離散部分群 Γ については以下の条件を仮定します。

  • 上半平面の商 Γ\H がコンパクトであること

上で離散部分群の例として SL(2,Z) を紹介しましたが、残念ながらこれは上の条件を満たしません。Selbergは SL(2,Z) など上の条件を満たさない場合にも公式を証明しましたが、複雑になるので今回の記事では扱いません。

実際の公式では、複素平面上の適切な関数 h ごとに等式が得られます。

改めてtrace formulaの両辺を書いてみましょう。まず上の条件を満たすように SL(2,R) の離散部分群 Γ と複素平面上の関数 h を決め、gを h のFourier変換とします。これに対し、

L^2(Γ\H) のLaplacian Δ の固有値の h に関する無限和 = Γ の元 γ ごとに定まる測地線の長さの g に関する無限和

という形の公式がSelberg trace formulaです。

この記事の残りでは、公式の証明の方針を紹介します。一言で言えば、

Γ\H 上の関数 K(z,w) を定義し、K(z,z) の Γ\H での積分を二通りの方法で計算する

ことで左辺と右辺を記述でき、それらが等しいと証明できます。

証明の方針

ではSelberg trace formulaの証明の方針を説明していきます。

まず H の点 z, w と実数 λ についての関数として、Green関数 G(z,w,λ) を用意します。 これは(z,w)についてはその間の距離 d にしか依存せず、dについての関数と見たときにLegendreの微分方程式の解になるものです。このGreen関数は Δ のレゾルベント (Δ + λ)^{-1} の積分核になります。

これを用いて H 上の二変数関数 k(z,w) を

 \displaystyle
k(z,w) = \frac{1}{\pi i }\int_{-\infty}^\infty G(z,w,\rho)\rho h(\rho) d\rho

により定義し、さらに K(z, w) を

 \displaystyle
K(z,w) = \sum_\gamma k(\gamma z, w)

と定義します。K(z,w) は γ について和をとっているので Γ 不変になり、Γ\H 上の関数を定めます。*1

固有値側

定理の左辺である Δ の固有値の無限和がどのように現れるかを見ていきましょう。

L2(Γ\H)は Δ の固有関数からなる直交基底φ1, φ2, ... を持ちます。

φiの固有値をρiと書くことにしましょう。

  h を用いて定まる L2(Γ\H) 上の作用素 L を

 \displaystyle
Lf(z) = \int_{Γ\backslash H} K(z,w) f(w) d\mu

と定めます。つまり K を積分核とする積分作用素です。ここで K の定義に h を用いているので、L も h に依存しています。

Green関数とLaplacianの関係を考えながら頑張って計算すると、

 \displaystyle
L\phi = h(\rho)\phi

となることが示せます。

このことからK(z,w)をzについて固有関数展開すると、

 \displaystyle
K(z,w) = \sum_i h(\rho_i)\phi_i(z)\bar{\phi_i}(w)

となることが関数解析の一般論からわかります。

この式でw=zとし、Γ\H 上 dμ で積分すると h(ρ_i) の i に関する和が得られます。

つまり

 \displaystyle
\int_{Γ\backslash H} K(z,z) d\mu = \sum_i h(\rho_i)

が成り立ちます。これが固有値側の無限和です。

測地線側

次に跡公式の右辺である測地線に関する無限和を見てみましょう。

K(z, w) = Σγ k(γz, w)の積分をγ=1の部分とそれ以外の部分に分けて計算します。

まずγ=1ではk(z,z)の積分を具体的に計算することで

 \displaystyle
k(z,z) = \frac{1}{4\pi}\int_{-\infty}^\infty h(\rho){\rm tanh}(\pi\rho)\rho d\rho

となります。

次にγが1以外のk(γz, w)の積分を計算します。

Γ をその共役類に分解し、Cを1以外のΓの共役類の代表元の集合とし、Cpを特に素元、つまり他の元のベキで書けないものたちとすると、

 \displaystyle
\sum_\gamma k(\gamma z, z) = k(z,z) + \sum_{\gamma \in C} \sum_{g \in Z_\gamma\backslash\Gamma}k(g^{-1}\gamma gz, z) = k(z,z) + \sum_{\gamma \in C_p}\sum_{g \in Z_\gamma\backslash\Gamma}\sum_{n>0}k(\gamma^n gz, gz)

となります。ここでZγ={γn}は γ と可換な Γ の元全体、つまり中心化群です。

 \displaystyle
\sum_{g \in Z_\gamma\backslash Γ} \int_{Γ\backslash H} f(gz)d\mu = \int_{Z_\gamma\backslash H} f(z) d\mu
となることを使って、K(z,z) - k(z,z) の積分を計算すると

 \displaystyle
\int_{\Gamma\backslash H}K(z,z) - k(z,z) d\mu = \sum_{\gamma\in C_p}\int_{Z_\gamma\backslash H}\sum_{n=1}^\infty k(\gamma^n z, z)d\mu

となります。

g が h のFourier変換であることを使うと

 \displaystyle
 \int_{Z_\gamma\backslash H} \sum_n k(\gamma^n z,z) - k(z,z) dz = \sum_{n=1}^\infty \frac{l(\gamma)g(nl(\gamma))}{{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)}

と計算できるので*2、これを使うと

 \displaystyle
\int_{\Gamma\backslash H}K(z,z) - k(z,z) d\mu = \sum_{\gamma\in C_p}\sum_{n=1}^\infty \frac{l(\gamma)g(nl(\gamma))}{2{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)}

となります。

まとめ

以上の計算をまとめると、

 \displaystyle
\sum_i h(\rho_i) = \frac{{\rm vol}(\Gamma\backslash H)}{4\pi}\int_{-\infty}^\infty h(\rho){\rm tanh}(\pi\rho)\rho d\rho +  \sum_{\gamma\in C_p}\sum_{n=1}^\infty \frac{l(\gamma)g(nl(\gamma))}{2{\rm sinh}(nl(\gamma)/2)}

これが今回の設定でのSelberg trace formulaの証明の方針です。

今回はΓ\Hがコンパクトな場合のみ扱いましたが、上で述べたように Γ=SL(2,Z) などはその条件を満たしません。 Selbergはそのようなケースでもtrace formulaを証明しており、保型形式等の研究に多くの応用があります。

いずれそれらについても書きます。

*1:Poisson和公式の証明で f(x+n) の n についての和を取るのと同じ

*2:このあたりの積分の計算で双曲線関数が出てくるのは双曲計量を用いているからなのですが、そのあたりの事情についてもいずれ書きます。

有限群のFourier変換とGauss和

この記事は

日曜数学 Advent Calendar 2017 - Adventar

12日目の記事です。

 

昨日はパヤシさんによる「芸術/自然と数学」

payashi.hatenadiary.jp

でした。自然現象や芸術作品の対称性の中に群が現れることが見れてとても楽しい記事でした。

昨日の記事でもわかるように、群はそれ自体だけでなく、どのように図形を変換するか、あるいはその変換で何が変わらないかを調べることが大きな問題となります。

今日の記事も、群とその作用の様子、つまり双対性を利用することで、整数のある種の性質が理解できるというおはなしです。

 

先日とある事情*1によりGauss周期について調べているとき、

三重積 (@triprod1829) | Twitter

さんからGauss和とGauss周期はFourier変換になっているらしいと教えてもらいました。

(Gauss和やGauss周期についてはクロネッカー・ウェーバーの定理と証明のあらすじ(その1) - tsujimotterのノートブックをご覧いただくと雰囲気がわかると思います。この記事自体を読むのには特に必要ありません。)

 

それについてgoogleで検索したところ、"The Fourier Transform and Equations over Finite Abelian Groups"というタイトルのlecture note

http://people.cs.uchicago.edu/~laci/reu02/fourier.pdf

を見つけたので、その内容を簡単にご紹介しようと思います。

 

上の文献では方程式のmod pでの解の個数をFourier変換を用いて調べていて、例えば次のような事実を証明できます。

方程式 x^k + y^k = z^k mod pを考える。

p > k^4+3であれば、上の方程式はx, y, zが全てpの倍数でないような解を必ず持つ。

 

k=1の場合、問題の式は単なる1次方程式 x + y = z mod pです。

- p=2とすると、整数を2で割ったあまりは0または1ですが、この定理ではpの倍数でない解を探しているので、解の候補としては1のみです。x=y=1とするとx+y=2ですがp=2で割ったあまりは0なのでz=0となってしまい、条件にあいません。つまりp=2の場合は条件を満たす解はありません。

- p=3とすると、3で割ったあまりは0, 1, 2の3通りで解の候補としては1または2です。この場合にはx=y=1とするとx+y=2でz=2とすればこれが解になります。つまりp=3の場合には条件を満たす解があります。

- p=5とすると、5で割ったあまりは0, 1, 2, 3, 4の5通りで、解の候補としては1から4です。上と同じようにx=y=1, z=2とすればこれが解です。つまりp=5の場合には条件を満たす解があります。

p=7以上でも同様に解を持つことがわかり、k=1であればp>2で上の方程式は必ず解を持つことがわかります。

 

次にk=2の場合ですが、方程式としてはx^2 + y^2 = z^2 mod pを考えます。

- p=2とすると、x=y=1とするとz=0となってしまい、これは条件を満たしません。

- p=3とすると、解の候補は1, 2のどちらかです。これらの2乗を計算すると、1^2=1であり2^2=4ですがp=3で割ったあまりは4=1なのでいずれの場合にもx^2=1となってしまいます。つまりx^2, y^2, z^2の候補は1のみで、条件にあう解は存在しません。

- p=5の場合、上と同様に計算するとx^2, y^2, z^2の候補は1と4のみです。したがってこれも条件を満たす解が存在しないことがわかります。

- p=7の場合、x^2たちの候補は1, 4, 2の3種類です。この場合にはx=y=1, z=3とすればx^2 + y^2 = 2, z^2 = 3^2 = 9 = 2 mod 7となり、これが解であることがわかります。

- p=11の場合、x^2たちの候補は1, 4, 9, 5, 3の5種類です。この場合はx=2, y=4, z=3とすれば2^2+4^2=20=9 mod 11, 3^2=9ということでこれが解になります。

実はこの場合にもこれ以上のpで必ず解を持つことが簡単に証明できます。

 

k=3の場合、方程式としてはx^3 + y^3 = z^3 mod pを考えることになります。

- p=2ではこれまでと同様に解がありません。

- p=3では1^3=1, 2^3=8=2mod3なので、x=y=1, z=2が解です。

- p=5では1^3=1, 2^3=3, 3^3=2, 4^3=4 mod 5なので、x=y=1, z=3が解です。

- p=7ではx^3=1または6になります。したがってこの場合には解がありません。

- p=11ではx=1, y=2, z=4とするとx^3 + y^3 = 9, z^3 = 64 = 9 mod 11なのでこれが解です。

- p=13ではx^3=1, 8, 12, 5のいずれかで、この場合には解がありません。

この先コンピュータに計算させるとp=47までは解があることがわかりました。

 

k=4の場合もコンピュータに計算させると50以下の素数ではp=2,3,5,13,17,41以外では解があります。またk=5では50以下の素数ではp=2,11,41以外では解があるようです。

 

コードは特に何も考えてないループと、numpyを使って少し早くしてみたものです。

gist11cae6e6ba81db7b5d04b937febca4d2

 

上のコードでp<500の範囲を調べると、k=5ではp=71,101では解がない、k=6ではp=157, 257では解がないなどがわかります。

 

このように、kが大きくなると解が存在するか判別することが難しくなりますが、上の定理はどんなkであってもp>k^4+3であれば必ず解を持つということを主張しています。

 

さて、ここからは証明の方針をご紹介します。より詳しく知りたい方は、上記文献をお読みいただくか、こちらのpdf

math_pdf/gaussfourier.pdf at master · unaoya/math_pdf · GitHub

をごらんください。

 

より一般的な設定として、Z mod pの方程式 x + y + z = 0 とZ mod pの部分集合A, B, Cに対し、x, y, zがそれぞれA, B, Cの元であるような解の個数を調べます。

A, B, Cの全ての元を考えると x + y + z の値はZ mod pのp通りになるので、x + y + z = 0となるのは平均的にはA, B, Cの元の個数の積をpで割ったものになると期待できます。

この平均値と実際の解の個数の誤差を評価します。

解の個数は0に台を持つδ関数の値 δ(x+y+z) の総和として計算でき、δ関数のFourier係数が全て1であることからGの各指標χによる値 χ(x+y+z) を合計すればわかります。

自明指標の寄与が上の平均値であり、非自明指標の寄与が誤差項であることがわかり、これをA, B, Cの特性関数のFourier係数で評価することができます。

 

次にC = {z^k | z \in Z mod p}の場合を考えると、Cの特性関数のFourier係数はGauss和を用いて記述できます。Gauss和の大きさを計算することで具体的に誤差項の評価をすることができます。

 

以上のことを用いて、誤差項の上限が平均値より小さい条件を求めることができ、その条件を満たせば元の方程式が解を持つことがわかります。

 

mod pで方程式の解の個数を数えるという問題は、素朴でありながら数学の奥深さを垣間見せてくれる、非常に面白い問題です。

またコンピュータを使って色々実験することができるというのも、今を生きる我々ならではの数学の楽しみ方ですね。

このあたりの話については

数学とコンピュータ Advent Calendar 2017 - Qiita

でも書かせていただく予定ですので、よろしければそちらもご覧ください。

 

明日の日曜数学Advent Calendarはasangi_a4acさんの「中和滴定について書きます」です。お楽しみに。

*1:参考画像

f:id:unaoya:20171212005326p:plain